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R e n d e z - v o u s
― 店 員 様 は 神 様 で す ? ! ―

フランスに来てすぐのころに『???』と感じた、接客業についてです。

フランスはランデブー(約束や予約)の社会です。
お客様は神様ではないのです。
基本的にはレストランや美容院は予約を取るのが礼儀です。
私達が赴任してすぐに家を探すときも、車を買うときも、全てまず、ランデブーを取ってからでないと、お店の人に話を聞かせてもらえませんでした。
もし日本で車を買おうとか、家を探していたら、お店の営業の人がまずお客さんを得ようと必死になって、しつこいって程、接客されると思います。
アポイントを取るにしても、お店の人は極力お客さんの都合に合わせようと努力しますよね?
でも、こっちはお客さんの都合など聞きもしません。
『私はいついつといついつが都合がいいので、この日のどれかに決めてください』と、こうお店の方から言われてしまうんです。
病院も例外ではなく、まずランデブーを取らないと行けません。
銀行もそうです。
もちろん、アポイント無でも行くことは出来ます。
簡単な入出金や、口座の残高の確認程度でしたら、気軽に行けますが、新規で口座の開設や、家族カードの発行、融資のことなどはもちろんアポイントを取らなければいけません。
さもなければ、長々と待たされるのを覚悟して行かなければいけません。


幸いにして、スーパーやデパートはアポイントが必要無いのですが、これまた接客業とは思えない態度に、最初はびっくりしてしまいました。
まず、売り子さんはやる気なさそうというか、大抵暇そうにしています。
殆ど売る気無さそうな人が多いです。
(パリだけかもしれないですが、デパートなどの売り子さん達は、日本のようにノルマが無いとか)
そしてひどい時なんて(というか、しょっちゅう遭遇するのですが)、店員同士が雑談で盛り上がってしまって、お客が呼んでも来ない。
接客中にかかってきた内線電話で、お客さんそっちのけで夢中になって長話。
それから、レジの人も、会計処理中に電話で長々と、しかも仕事と全く関係無いことを延々話しているんです。
日本は過剰かもしれないけど、私はそれでも日本に居たときにアルバイトでサービス業を渡り歩き、『サービス業のなんたるか』を身に付けているので、100歩譲っても信じられません。
おまけに、全ての動作が信じられないくらい遅いんです。
包装にしても遅いし、雑。
おおらかなラテン気質なのか、出来あがったラッピングを見て、いつも後悔してしまいます。
自分でやれば良かった・・・と。

大体、売り子がそんな態度で、フランス人は誰も文句を言わないんですよね、それ自体も信じられません。
さすがのフランス人も、大抵の人はイライラしているから、認めているわけじゃないんだと思います。
言っても無駄と思っているのか・・・。
私も最初は本当にびっくりして、そして憤慨したのですが、あまりにも日常茶飯事のことなので、『もういちいち怒っていたらきりがないわ』と悟ってしまい、ある程度のことには動じなくなりました。
『C'est Paris!!(これがパリさ)』と自分に言い聞かせていますから(笑)。

それでも忘れられないことがあります。
来て早々に、一番びっくりしたのが、某有名百貨店で、食器を買おうとしたんです。
時間は閉店15分前。
日本なら問題無く当たり前に買えますよね?
こっちでは、デパートなどで物を買う場合、大抵は、

@まず店員を呼ぶ。
A欲しいものを言う
B伝票を書いてもらう
C伝票のみを持って、レジに行き、先に支払いを済ませる。
その間に包装してくれる。
D店員に支払い済みのレシートを見せて、商品を受け取る

という流れになっています。
ですから、私達も近くにいた店員さんを呼んだのですが、なんと無視!!
それでも2・3度声をかけるとやっと来ました。
『こんばんわ。済みませんがこれが欲しいんですが』
『Non(駄目)』
『???どうして??』
『7時で閉店だから』
そこで夫婦で顔を見合わせてあきれてしまいました。
『15分あればコーヒーカップ2客くらい買えるでしょ??』と。
でも、ノルマが無い、彼女達にとってはお店の売上のことよりも、自分の今日の上がり時間が大切なのです。
すなわち彼女達にとって7時閉店と言うのは、7時にお店を閉めてそれから片付けるのではなくて、7時にお店を出ることなのです!!
ここでむっとして怒ってしまうのは簡単だけど、私達の最終目的は、コーヒーカップの購入だったので、フランス人の性格を良く知っているだんなさまはぐっと押さえて、ニコっと笑いかけもう一度丁寧に『済みませんが、お願いします』と頼んだら、渋々伝票を書いてくれました。
さすがに、反省したのか、会計を済ませて戻ってきたら、バツが悪そうな顔をして、『1日中立ちっぱなしで疲れていたから・・・』とゴニョゴニュ言い訳していましたけどネ。

また、早さが売り物のはずのファーストフードですら、サービスがなっていません。
フランスで良い接客はもう望むべくもないのですが、『せめて、ファーストフードでは待たされたくない』といつも思うのですが、ハンバーガー1つ買うのもままなりません。
間違いも多いのですが、時間が掛かりすぎるのです。
一番長かったときは2人分のセットを30分もかかって購入したことがあります。
私は日本のファーストフードで学生の時、アルバイトで準社員まで勤めたことがありますが、『もう、カウンターの中に入って自分でやったほうが早い!!』といつも歯軋りしてしまいます。
この国は無駄な動きが多すぎます。
日本の飲食店の場合いかに効率よく動くか、考えさせられるでしょ?
マックの場合、注文を受けてからどう動くか(何を最初に取りに行くかとか)とか。
フランスの場合は、この前ウエィターさんの動きを観察してみたんだけど:

1 まず席に案内される。
2 ソムリエ(もしくはワインとか飲み物担当の人)が『食前酒を飲むか?』と聞きに来る。
(しかし大抵の店ではこの時にメニューも一緒に持ってくるような気の利いた事はしない)
3 テーブル担当がメニューを持ってくる。
4 担当が注文を取りに来る。そしてワインを飲むかどうか聞かれるが、大抵ワインのメニューを持ってきていないので、取りに下がってしまう。
5 ワインメニューを持ってくる。
6 ワインの注文を聞きに来る。
7 前菜を持ってくる。
8 前菜を下げに来る。
9 メインを持ってくる。
10 メインを下げに来る。
11 この後チーズを食べるかそれともデザートにするかと聞きに来るが、大抵メニューを持ってきていない。
12 メニューを持ってくる。
13 注文を聞きに来る。
14 チーズORデザートを持ってくる。
15 下げに来る。(尚、チーズのあとに更にデザートを食べるなら、12〜15が繰り返されます)
16 コーヒーの注文を取りに来る。
17 コーヒーを持ってくる。
18 お会計を頼む。しかし、一旦下がってしまう。
19 伝票を持ってくる。
20 お金を取りに来る。
21 お釣りを持ってくる。


以上が、典型的なギャルソンの行動です。
すごいでしょう??
無駄が沢山あるのが分かると思います。


後は、これは接客業だけじゃなくて、フランス人全般に言えることですが、彼らは自己防衛術がすごいです。
何かミスが発生したり、問題が起こった場合のいいわけのすさまじさったら、もう圧倒されます。
フランス人の良く言う言い訳で、
Je ne sait pas. (私は知らないとか私の担当じゃないとか)
C'est pas moi. (私じゃないとか私は担当じゃないとか)
C'est pas ma faut. (私のせいじゃない)
この3つを聞かない時は無いくらい。
一番上のは、本当に良く使われていて、例えば欲しい洋服が丁度自分のサイズが無くて在庫状況などを尋ねても『Je ne sait pas』と言っておしまい。
調べようとなんてしてくれません。
『調べて』といっても、『C'est pas moi』でおしまい。


また、これはサービス業かなとも思うのですが・・・パリのトイレも相当です。
パリでトイレに入りたかったら、Caféかデパートなどで探すしかないのですが、一応何箇所か、公衆トイレなるものがあります。
そこには通称『トイレおばさん』という人が入り口に居て、大きな荷物とか預かってくれます。
で、大抵最初か最後に2F程度のチップを置くのが慣習です。
でも、チップを置くトイレがきれいかというとそうではないのがパリ。
特に、すごく汚い時は、チップを握り締めながら『なんの為にあなたはいるの??』とチップの変わりに質問を置いていきたい衝動にかられること、多々あります。
デパートのトイレも相当汚くて、驚きます。
掃除の問題もあるのでしょうが、使う人達の問題もあるので一概にサービスとは言えないけど、でも、いつも『これは無いよなー』と思ってしまいます。
(フランス人は自分の家を綺麗にすることには執念を燃やすのに、公共の場はどうでもいいみたいです。
ごみとか平気で捨てるし。)
こう書いてくると、良くそんなところで生活しているねって言われそうですが、馴れって恐ろしいもので、ちょっとやそっとのことでは動じなくなってしまいました。
逆に、少し丁寧な接客を受けるといたく感動してしまい、そこのお店に通い続けてしまいます。(笑)
それでもやっぱりパリの多くのCaféでは、ギャルソンさん達のきびきびした気持ち良いサービスが受けられますし、それなりのレストランでは、『さすが!!』と唸るくらい素晴らしいウェイターさん達がいます。
彼らは専門の学校で教育を受けているとは言いますが、教育を受けただけでは限界もありますから、やっぱりお店の主人の方針でしょう。
それに私達が渡仏した頃に比べたら、最近は普通の小さなお店でも感じがいいところが増えたような気がします。
飲食店にしても、サービスを売り物にし始めたところもあるくらいですから、今後フランスのサービス業全体が変わるのを楽しみにしています。


そして、最後に間違って欲しくないのは、私はここでフランスの売り子さん達の態度が日本に比べたらひどいと書いたけど、じゃぁ、私達お客さんが質を落として良いのかと言うのとは違うんです。
相手がひどいからこっちも適当にでは問題解決になっていません。
いつも気になるのが、日本人観光客の評判がデパートなどでとても悪いことです。
言葉の問題じゃないんです。
まず、挨拶もせずにずかずかとお店に入り込んでくる。
そして、何も言わずに、品物に触りまくって、挙句に、何も言わずに出て行く。
このような態度が嫌われるんです。
私もいつも目にして『あれはまずい・・・』と思っても、『彼ら彼女らにとってはたかだか何日間の観光だし、私が余計なことを言ってイヤな思いをさせるのも・・・』というジレンマがあり、なかなか他人には注意できません。
私が知合いのフランス人に『フランス人の接客がもう少し、良かったら・・・』と言ったら『あら、日本人観光客のお客としての質も相当悪いわよ』と切り返されてしまいました。
さすがにあの時は、恥ずかしかったです。
フランス語も英語も出来なくてもいいから、せめて、挨拶だけはしてください。
入るときは、Bonjour(ボンジュール・こんにちは)、帰る時は、Au revoir(オゥボァー・さようなら)。
何かしてもらったら、Merci(ありがとう)と言って帰ってもいいと思います。

今後フランスの接客業と、そして日本人観光客の質が上がるといいなと思います。
では、また。

writtein by ラスカル

La Plage des Enfants
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