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空 中 都 市 へ の 旅   1

空中都市。誰がその名を付けたのだろうか?ただ、一度その全貌を直接見る事が出来れば、空中都市というネーミングに違和感を感じる事はないだろう。

ここは、かの宮崎駿の映画、天空の城ラピュタのモデルとなった場所でもある。

南米ペルーの古都、クスコからウルバンバ川の下流114kmの渓谷の尾根の頂上にあり、周囲はジャングルに囲まれ、空からしか見る事ができない事から、空中都市と呼ばれるようになった。ここはかつて南米の一大帝国であった、インカ帝国が、スペインの侵略を逃れる為に築かれた都市で、かつては一万人以上の人々が暮らしていたと言われている。その規模から、インカの記録に残る秘密都市、ビルカバンバではないかとも言われている。

このお話は、そんなマチュピチュを見たいという思いをようやく果たした作者のショートトリップを綴ったものです。

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朝5時起床、6時の列車に乗るために宿を出た。町にはガスがかかり、やけに冷える。ここは高さ3,300mを越える。高山病かと思われる頭痛に昨日は丸1日悩まされていたが、ずいぶん良くなっている。

駅に到着。露店で水とパン、少々のクッキーを買う。プラットホームにはすでに列車が停車していた。ここで列車と言うのはアウトバゴンと呼ばれる登山列車で、近年、民営化され、最近ではさらに豪華な列車も走っているそうです。

出発時刻を5分ほど過ぎて、登山列車がゆっくりと出発。窓から顔を出してみるが、この列車、どこに行くのだろうか?マチュピチュへは、山を越えていくと聞いていたのに、列車は、山沿いに、あらぬ方向へ向かっている。周りにはびっしりと家が並び、列車の行方はいづこへ、、、。すると、急に窓の外に線路が、、、。どうやら路線はスイッチバック方式の様で、列車は一度停止して、逆の方向へ進み始めた。そして床の下から歯車のかみ合う音が、カチカチカチと小気味良い。かつて日本の碓氷峠にあったような、アプト式の列車の様です。線路とは別に中央にギザギザのレールが走り、車両に付いた歯車をかみ合わせてそれを使って上に登ると言うもので、加速の付いた様にスイスイ登る列車は、まるでジェットコースターの、スタートからレールの頂上まで登る間の様な、どきどき感を覚えたのは私だけでしょうか?

徐々に広がるクスコの全景、すり鉢状の盆地にびっしりと広がる街並、そしてはるか遠くにアンデス。まさにここは、異国、遠くまで来たのだなあとつい感傷に浸ってしまいました。

山を登り切り、緩やかな下りになると、やがて周囲はのどかな田園風景。ガタゴトと揺れる列車と、果てしなく続く緑の大地、心地良さにふと眠りに落ちる。ただ、時々跳ねるように上下に揺れる列車に悩まされました。

やがて、時々停車する駅で、列車の窓から、車内の通路で売り子が、昼食や、つまみや、お菓子など様々な食べ物を売りに来た。その威勢の良さと、うまそうな匂いにつられ、焼き鳥のようなおつまみを買って、朝買ったパンに挟み込み、サンドイッチの朝食。いや、これが美味である!

そんな所に、今度は4人のフォルクローレバンドが車内の前方で流しの演奏を始めた。その流れるようなリズムとフォルクローレのコーラスの美しい調べについうっとり!世界の車窓からという番組が好きで良く見るのだが、本当にその中に出てきそうな一シーンだった。最後に、コンドルは飛んで行く。突き抜けるような青空に飛んでいくような笛の音、ここは別世界、これが旅の醍醐味。

所要3時間半、クスコから北へ約110km、田園風景も、やがて左右に山がそそり立ち、列車は渓谷へと入っていった。そして10時前にプエンテ・ルイナス到着。ここで降りる乗客はほとんどがマチュピチュへの観光客。皆、駅のホームからマチュピチュ行きのバスへ乗り込む。

バスに乗り込み、出発。マチュピチュへは駅からさらに400mほど上の尾根の頂上にあり、日光のいろは坂のような険しい道をバスはジグザグと登って行く、そして20分ほどでマチュピチュの麓の観光センターへと到着。だが、バスを降りても、下からではマチュピチュを見る事が出来ない。すぐ近くまで来ているのは確かです。そして、、、。
 

 

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