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ピラミッド登頂記 2

ここは間違いなくクフ王のピラミッド。南東にスフィンクス、南西ににカフラー王のピラミッド、そしてその奥に小さな、メンカウラー王のピラミッド。その高さは本来は146mだったが、表面の化粧岩がなくなってしまった為、137mである。真ん中にそびえ立つ黒い鉄の棒は、その本来の高さを表しているそうだ。周りにほとんど何もないせいか、上から見ると、想像以上に高い。こんなところまで登ったんだと、思わず足がすくむ。

5人ともひたすら感傷に浸っていたが、ふと中央付近に出っ張った岩を見ると、いたる所に何か書いてある。懐中電灯で照らして見ると、なんと落書きだ!名前と国名、そして登頂年月日まで、しかも、古いものだと、17世紀のものまである。登っておいてなんだが、貴重な遺跡に傷をつけまいと、もちろん何も書かなかった。

朝の5時。ふと市内中からなにかサイレンの様な音が鳴る。どうやらコーランのようだ。永遠と続くその調べ、次第に空が虹色に輝くと地平線の向こうから朝日が差す。言葉にならない。ここはどこなのだろう。世界にこんな場所があるなんて、そんなことを考えていたら、あっという間に辺りは明るくなり、町の息吹が聞こえ始めた。

こう見てみるとカイロは広い、西は砂漠、東は地平線まで街が広がる。さらに南北はナイル川沿いにどこまでも街が広がる。隣に聳え立つカフラー王のピラミッド。そして自分たちのいる場所が、すごい場所だと言う風に改めて気付く。

みんなで記念写真。そして写真大会。この思い出は今でも貴重な1ページ。

そろそろすっかり明るくなり、急激に暑くなってきた。名残惜しいが、ピラミッドの頂上とはこれでお別れ、荷物をまとめて下山に取り組む。改めて判ったが、降りるときはとても大変だった。まず、足場が狭い。照りつける日光は体力を奪っていく。その高さは想像以上に恐怖を生む。足場に摑まりながら、一歩一歩段に腹をこすりつけながら降りる。

降りるのには登った時と比べて倍以上かかっていた。そしてあと、地上まで15,6段になった時、警備員も気付いたらしく、私達の下から手を振っている。

そして下に到着するや否や、案の定、警備員達は露骨に賄賂を要求してくる。5人は打ち合わせの通り、英語ができない振りをして、ゲートのほうに歩きながらのらりくらりとかわしていると、やっとあきらめたようで、去っていった。そして私たちも何事もなかったように、ここを訪れる観光客の人ごみの中へ、そして同じ観光客に戻った。

でも確かに、他の人とは違ったピラミッドの光景が脳裏に焼き付いていた。

END
※ この旅行記は1993年夏の旅を旅行記にまとめたものです。その後、転落者が出た様で、1995年には警備と罰則が強化され、その後、逮捕者も出たそうです。おそらく、同様の旅はもうできないと思われます。そして、この旅行記を参考にして同様の行為は絶対にしないでください。もちろん責任も負いかねます。
 

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