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【Misao's First India Report(31)】
=kite and lantern=


DATE:2001.08.14 Hyderabad
REPORT&PHOTO:石谷みさお(りぶらぶりんくドットコム)


「これは、ひどいなあ」
日本から事前に航空便で送ったお土産は、入れていたダンボールからメッセージを書いたラッピングペーパーから、何から何までズタズタに破かれた状態でG社に届いていた。
これが日本なら、責任者出てこんかい!と、なるところだが、これはすべてインドの税関で受けたチェックの後。常に隣接国のテロの脅威にさらされかつ、独立記念日を間近に控えたインドでは当然の事で、それを事前に知らなかったこちらに責任がある。

「トランクに詰めてきたら良かったなあ。」
セロテープをぺたぺた貼ってラッピングを修復しながら、そう言う私の横で
「なんでトランクに詰められなかったかわかってるんですか?」
と、相棒があきれた声で言いながら、大きなかばんから、凧と提灯を取り出して飾る場所を物色し始めた。

「何してんの?」
「いや、せっかく持ってきたから。」
「もしかして、それ持ってきたから?。」
「お土産がトランクに入らなかったんです。」

一年前の春、私たちはサンフランシスコの路上で新聞紙を広げ、ポストカードに道行く人の名前を漢字で書き、かつ、その意味を教えて1枚1ドルで売るというごくごくシンプルな商売をし、わずかのドルを稼いだ。その時、おそらくこれから行くであろう沢山の国々で、必ず一度は漢字を書いて商売をしよう!と、稼いだドル紙幣の前でプラスチックのコップに注いだ安ワインを掲げ鉄のように固く誓い合った。
しかし、今回の逃亡では、デリーでの情けない一件が元で、早くもその誓いは豆腐のようなもろさとともに崩れかけていた。

「やっぱり、すんのんかいな?」
「はい、あなたは漢字書いてないとだめです。」

チェンナイからの列車の中で、そういうことはしてもいいなあ、という話だけはしていた。お土産と一緒に渡すのも楽しいよな。一応商売道具は持って行くことにするわ。

「せやけど、凧と提灯はいらんやろ?1name1$って書いてあるし。」
「いや、これは必要です。もちろん今回はFreeですよ。俺ちゃんと説明しますから。」

なぜ凧と提灯が必要なのかさっぱりわからないが、相棒はすっかりその気で会議室の隅にそれらを飾り、段取りを話し始めた。

 

written by Lucy Misao
web livelovelink.com

 

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