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【Misao's First India Report(33)】
=Mrs.PR=


DATE:2001.08.14 Hyderabad
REPORT&PHOTO:石谷みさお(りぶらぶりんくドットコム)

インドでも女性の社会進出は目覚しい。ここG社でもプログラマの25%は女性だ。基本的にIT技術者はエリートだ。日本に来ている技術者の多くは工学博士という肩書きまで持っている。ここG社で、そんな若いエリートプログラマ達をまとめているのが30歳のミセス P.R。
プログラマでエリートで、おまけに女親分で、となると、どうしてもキャリアぷんぷんの怖いお姉さんを想像してしまうが、彼女はそうではない。
妊娠7ヶ月のお腹を抱えて、穏やかに微笑むその姿はまるで日本の昔懐かしいおっかさんそのもの。もちろん美人である。
声を荒げることもない。媚を売ったしゃべり方をすることもない。ヒステリックでないどころか、まるで観音様のような面持ちでゆっくりとゆっくりと歩く。

生理用品は彼女に買いに連れて行ってもらった。大きなお腹の彼女に気遣いながら、彼女はやんちゃな子供のような私を気遣いながら、ゆっくりと二人で手をつないでハイデラバッドの埃まみれの雑踏を歩く。
片言の英語と身振り手振りを交えながら、お互いのことを話す。相変わらず私の英語は不細工でなかなか通じない、でも互いの持つ似た経験が言葉を補い互いを知ることが出来る。

小さな雑貨店につき、ミセスPRが店員に何かを言うと、例のごとく生理用品が目の前に飛んできた。しかしこれは、求めているものとは違う。
私は内装式を常用している。しかし、ミセスPRに言葉で説明しても、なかなか要領を得ない。仕方がないので、現物を見せると、
「そんなの見たこともないわ。」
女性のミセスPRでさえ見たこともないものを男性の店員が知っているはずもない、と思いながらも、店員の目の前に現物を突きつける。
やはり結果はバツ。
仕方がないので、ポピュラーなタイプのモノを買い、ミセスPRと手をつないで、また色々なことを話しながらオフィスに戻った。

彼女は忙しかったはずだ。子供がいる彼女にとって、オフィスでの一分一秒は、想像を絶するほど貴重なものだ。そんな貴重な時間を私の個人的な買い物に割いてくれたことを心から感謝して、お礼を言った。
「お忙しいところ、本当にありがとう。」
「いいのよ。」
穏やかな微笑みとともに、早速トイレに駆け込もうとした私にミセスPRが一言、
「みさお、(生理用品の)使い方を教えましょうか?」

私と相棒は会議室を陣取っていた。全員を集めてのミーティングが終わり、G社のスタッフが入れ替わり立ち代り相棒のところへ仕事の打ち合わせにやってくる。傍らで私は、これまでの逃亡のキーワードを書き続けていた。
ミセスPRはそんな私を見ては
「疲れていない?」
と、気遣う。
「大丈夫。疲れているように見える?」
「いいえ、そうは見えないけれど。」
実際のところ、私はとても疲れていた。どうやら、すっかり見透かされている。

今までの彼女の立ち居振る舞い、そして、細やかな一つ一つの気遣い、どれ一つとっても私はかなわない。日本で多くの女性と会うけれど、こんな女性と出会わなくなって久しい。
彼女は久しぶりに出会った「大きな女性」だった。

written by Lucy Misao
web livelovelink.com

 

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