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【Misao's First India Report(11)】
=What ever you want=


DATE:2001.08.10 in New Delhi
REPORT&PHOTO:石谷みさお(りぶらぶりんくドットコム)

「I don't like. (好かん)」
その一言で、数着のドレスが飛び交い、目の前に広げられる。手にとってゆっくり品定めなど不可能に近い。少しでも妥協してしまえば即採寸。パンジャビドレスの山を前にして、怪しげな店員との攻防戦は続く。

夕暮れのマーケット。
物売り、呼び込み、物乞いの小さな姉妹、足のない乞食、飛び交う大声、聞き慣れない言葉。カレーの臭い、舞い上がる埃、そして裸電球に灯がともると同時に訪れる夜の市場は、食材を求める人で溢れ帰る。

これほどまでパワーに満ちあふれた場所を私は知らない。
売る方も買う方も、乞う方も、乞われる方も、みなぎるパワーの応酬を繰り返し、増幅したそれが市場全体を包み込む。

「I don't like,too. (好かん)」
「Ok, any more (ほなこれは?)」

10着をゆうに越えるパンジャビドレスを間に挟み、次から次ぎへとドレスの袋は飛び交い続ける。ここまで来たら、何としてでも気に入ったものしか買わない。これだけされたら、縛ってでもこの日本人にドレスを売りつける。
平静を装う私達の攻防戦はますます激しさを増し、ついに他の店員が援軍に入る。飛び交うドレスの数は二乗になり、ちくしょう、このままでは負けてしまう。

「お願いですから、そのへんで辞めて貰えませんか。」
傍らで援軍にさえなれない相棒はオロオロと口を挟む。
「それ以上やったら、多分、店員さん怒ると思います。」
「うるさいわい。こっちは客じゃい!」

もっともっと見たい。豊富なテキスタイルにどこまで行っても視点は定まらない。まだまだ勝負はこれからよ。負けてたまるか。手首をまわし、視線を整え、怪しげな店員をきっとにらみ、攻防戦は最高潮を迎える。

「I don't like this !!(他にええのんあらへんのんかい!)」
「What ever you want !!(なんぼでもおまっせ!)」


written by Lucy Misao
web livelovelink.com

 

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