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【Misao's First India Report(38)】
=please bring me it=


DATE:2001.08.14 Hyderabad
REPORT&PHOTO:石谷みさお(りぶらぶりんくドットコム)


夜10時からのロードショーを見るために映画館へ繰り出す男達をホテルのロビーで見送り、ヘロヘロに疲れきった体でシャワーを浴びた。
明日は6:00にホテルを出なければならない。荷物を整理し、寝酒を一杯あおってとっととベッドに横になろう。男達は今頃映画館で踊っているのかと思うとちょっと残念だが、これ以上疲れをためるわけにはいかない。

荷物はそのままで、寝酒を頼むためにルームサービスに目を通す。英語は相変わらずできなくても、酒の名前だけは読めるから面白い。とりあえずはビールかな、そんなことを考えていると、枕元の電話がけたたましく鳴った。

「ハロウ」

電話を取ることはもう怖くは無い。どのみち、なるようになる。余裕綽綽で受話器を取ると、思いがけず、男性の野太い声がヒンディーをまくしたてた。
何を言っているのかさっぱりわからない。仕方がないので、「英語でお願いします」という。そのあとは例のヒンディー英語がマシンガンのようにまくしたてる。

なるほど、どうやら頼んでいたクリーニングができたらしい。
「持っていってもかまいまへんか?」
どうやらそんなことを言っている。
「please bring me it 」
頭の中ではちゃんと英単語が並んでいる。けれど、やつぎはやの質問に押されて言葉はまったく出てこない。結局例のごとく
「Sorry I can't speak English」
男は「OK」と言って電話を切った。

ほどなくしてベルが鳴る。
ドアを開けるとにこやかな顔をしたおっさんが洗濯物を抱えて笑っている。別に言葉は通じなくとも、他に用事は何もない。相手にしてみれば、私が部屋にいることさえ確認できればよかったのだ。
妙におかしくなって、おっさんと一緒に笑いながら、洗濯物を受け取る。人のよさそうなおっさんにすっかり気を許し、受け取りにサインをするため、ドアを開けたまま、ペンを取りにベッドサイドに戻る。

振り向くと、ドアに立っていたハズのおっさんは、部屋の中。あいかわらずニコニコと笑って立っている。「うっ」と引きつりつつも、サインをし、早々におっさんを追い返す。しっかりと鍵をし、ほっとしたのもつかの間。改めて部屋を見渡すと、朝干した色とりどりの下着がそのままに。

「見られた!」

まあええわ。別に減るもんやなし。とは思ってもやっぱり悔しい。タダでは悔しい。どうせなら料金箱の一つも用意しておくんだったと思っても後の祭り。
私はそそくさと下着をポーチに詰め始めた。

written by Lucy Misao
web livelovelink.com

 

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