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【Misao's First India Report(39)】
=Being left alone=


DATE:2001.08.15 Hyderabad
REPORT&PHOTO:石谷みさお(りぶらぶりんくドットコム)


気がつけば朝だった。
昨夜は荷物を整理したあと、結局ルームサービスのメニューを手にしたまま眠ってしまった。インドに来てあまり寝酒を飲んでいない。それを必要としないほど、心地良く疲れていた。
朝6時のロビーに待ち合わせた相棒はまだ来ない。どうせ昨夜は遅くまで騒いでいたのだろう。なんでえ、自分だけ楽しみやがって、と愚痴りたいのをぐっとこらえてマダムよろしくソファに腰掛ける。

「Good morning madam! 」
背の低い若いボーイが嬉しそうに元気に声をかける。
「Madam, news paper? ( 新聞は如何ですか?)」
「 No , Thaks」

高級ホテルのボーイにしては珍しい、でも朝には気持ちのいいタイプ。もしかして朝専門の人かいな?そんな事を思って彼を見ているところへ、寝癖も直さず、トランクを抱えて相棒が降りてきた。

「Good morning sir!」
すかさず、さっきのボーイが声をかける。相棒も喜んでなにやら話している。

「元気なボーイさんやな。」
「彼、僕のこと覚えていてくれましたよ。」

三ヶ月ほど前に相棒はこのホテルに一週間ばかり滞在した。日本人は少ないからなのか、あの元気なボーイと妙に気があったのかなぜか彼はこの男のことを覚えていた。再会を喜ぶ二人の間に私の入る隙はない。
運転手が迎えに来た。この運転手も昨夜男達と一緒に映画を見て騒いでいたらしい。車中では二人が昨夜見た映画「ラ・ガン」の興奮を語り合う。私は黙ってそれを聞いている。
ハイデラバッド空港へ向かう道は人もまばらで何の喧騒もない。道路にはリクシャも車も見当たらない。相変わらず「運転したい」という相棒に、仲間はずれの嫉妬も手伝って「ここまで無事で来て、いまさらそんなことされてたまるかい!」と、キツク言い放ち、無事空港に到着する。
人ごみの中、運転手に礼を言い、再会を期待して別れ、足早にトランクを転がして空港入り口へ向かう。と、そこに昨夜一緒に騒いでいたスタッフの一人が見送りに来ていた。
相棒と何かの会話を交わす。
何を話していたのか。その中身は詮索しない。男同士の話。

昨夜からどうも私は男達の中で仲間はずれになっている。もとより、何もかも同じにとは行かないことも知っている。でも、やっぱり少し寂しい。

高校生活の三年間、私はクラスに紅一点という環境で過ごした。男子生徒と一緒に体育をし、柔道の授業もとった。実習ではゴム長をはいてセメントを練った。一番最初の保健の授業では男性向けの避妊方法をしっかり教わった。
自分では一緒だと思っていた、けれど実際は随分と皆に気を使わせていた。思春期のど真ん中にあって何よりも私がしっかりと学んだこと。それは、男と女の絶対的な違いだ。

空港の待合室で、昨夜はどうやった?と聞いても相棒は眠たげな声で「いやー楽しかったー凄かったー」としか答えない。
いつもなら、力いっぱい相棒のみぞおちめがけてパンチを食らわせているところ、だが、今日はよしとする。

 

written by Lucy Misao
web livelovelink.com

 

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