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【Misao's First India Report(42)】
=Open the door=


DATE:2001.08.15 Delhi
REPORT&PHOTO:石谷みさお(りぶらぶりんくドットコム)


夕方5時、ミセスARとG社スタッフ達に世話になったお礼を言い、ゲストハウスをあとにした。いよいよ6時30分の飛行機で帰国する。

空港まであのプロフェッショナルの運転手に送ってもらうことはできなかった。彼はすっかり準備を整えて待っていた。そして、私達もそれを望んでいた。けれど、そうはいかない事情がある。
「あなたのおかげで、とても素敵な時間を過ごせました。」
なけなしのボキャブラリーと相棒の手助けを借りて、彼にそういい、深く頭を下げた。ミセスARには、必ず一緒に写した写真を送ります、と約束した。
相変わらず雨はしとしとと降り続いている。

待ち時間に、免税店で、嬉しそうにカーマストラを購入する相棒を横目であざけりながら、独立記念日を翌日に控え、静まり返った空港を見渡した。私が過去に訪れた数少ない空港のどことも違う、独特の空気と匂いがそこにある。

昭和40年代もまだスタートしたばかりだった頃、小さかった私は、隣のおばちゃんの自転車の荷台に乗っていた。片側は砂利がまかれ、片側は砂埃を立てる、そんな中途半端な埃まみれの道を「ちゃんとつかまっときや!」といっておばちゃんは走った。車の排気ガスと砂埃と喧騒の中、私はおばちゃんの背中を持とうか荷台を持とうか、どっちが怖くないかなあと、それだけを考えていた。

時折、何かのはずみで、とうの昔に忘れてしまったはずの景色が、思い出したからといって、何の役にも立たない、ただ懐かしいだけの景色が、鮮明によみがえる。
私の中に鍵をしたいくつものドアがある。鍵をどこにしまったかさえ思い出せない、そんなドアが沢山ある。この国の空気と匂いは、まるで鍵など最初からなかったように、そのドアを思い切り開け放つ。

 

written by Lucy Misao
web livelovelink.com

 

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