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【Misao's First India Report(5)】

=taboo=

DATE:2001.08.10 in New Delhi
REPORT&PHOTO:石谷みさお(りぶらぶりんくドットコム)


「おんどりゃ何さらしとんねん、ここで撮ったらアカン言うたやないかい!なめとったらあかんどコラ!客もへったくれもないわい、あかんもんはあかんのじゃ!いっぺんいてこまされたいんかい、オラ!」

と、言ったかどうかはわからない。
タイヤをパンクさせるための針を持ったオッサンが運転手をもの凄い形相で怒鳴りつける。

アカンとオッサンに言われた後で、国会議事堂前で写真を撮った。
こっそり撮ればいいものを相棒がフラッシュまでたいて撮った。
マシンガンを持った数人の兵士に囲まれ、どうしていいかわからず怒鳴るオッサンの背中を見ながら呆然とした。

ほんの数分、どういうやりとりがあったのかはわからない。
とにかく促され車に乗り込み発進した。

「あのオッサン、ウチらの方には目もくれんかったなあ」

遠藤周作著「深い河」の最終章に、撮影禁止の火葬場を撮った若い日本人カメラマンの身代わりに、そこでアウトカーストと一緒に死体を運んでいた日本人神父が袋叩きにされるシーンがある。
一瞬、見たこともないそのシーンが、さっきのオッサンの背中とだぶった。

運転手は片言の英語しかわからない。
だからどういうやりとりがあったのかを聞くことは出来ない。
ただ、この国でしてはいけない、と言われていることは、絶対にしてはいけないのだと言うこと。そして、もし私たちがそういう事をした場合、身代わりとして罰を受けるのは彼なのだ、という事だけは肝に銘じた。

written by Lucy Misao
web livelovelink.com

 

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