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【Misao's First India Report(8)】
=Never drive=


DATE:2001.08.10 in New Delhi
REPORT&PHOTO:石谷みさお(りぶらぶりんくドットコム)


デリーには別段何の予定もなかった。
渡印前の業務が多忙を極めたこともあり、その日のスケジュールはあえて何も立てずにいた。エアコンの効いた部屋で一日眠って夜にショーを観る、くらいの気持ちでいいと思っていた。

しかし、なかなかそうはいかない。朝からG社スタッフが入れ替わり立ち替わり、あれやこれやと気を効かせて尋ねてくる。
「朝飯どうや?おかわりどうや?珈琲どうや?もっとどうや?」
「どこ行きたいねん?何食いたいねん?何買いたいねん?何でも言うて!」
別段何もしたいことはないのだ、強いていえば、もう一着パンジャビドレスが欲しい、と告げると、いくつかの場所をピックアップして運転手にメモを渡し、気がつけば私たちはそのメモの通りに、それぞれの場所へ運ばれるままになっていた。

この運転手は、いつもゲストを案内している事もあり、デリーの道路を熟知している。運転技術はかなりのもので、道路はいつもカーチェイスだが、後部座席の私たちには何一つストレスを与えない。

「オレ、運転させてもらっていいですか?」
デリー門、ネルーミュージアムから、ウクタブミナルへ向かう途中、そのストレスのなさに何を勘違いしたか、相棒が突然、突拍子の無いことを言い出した。

「なんで運転したいねん?」
「あのね、こうやって彼の運転するままに乗ってるのは、それはラクでいいですよ。でもね、自分で運転しないと、何も考えないし、土地勘が全然つかめない。いつまで経っても、何もわからないままです。あなたも京都で、地図片手に、半日くらい平気で歩くでしょう。それと一緒ですよ。」
「確かに、道理やな。」
「ええ。」
たかが一日滞在するだけの場所で土地勘もへったくれもあるかいな、と思いつつ、真剣に話す相棒に、とりあえずはその可能性を探る事にする。

「免許は?」
「国際免許持ってます。」
「ここで使えんのん?」
「わかりません。」

「この車、ミッションやで。」
「オレ、オートマしか乗れません。」
「ほなあかんがな」
「運転しながら教えて貰います。」

「ふーん」
「じゃ、いいですね?」

「Never!」

こちとらまだまだ、命は惜しい。

written by Lucy Misao
web livelovelink.com

 

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